【海外マーケティング】イギリスで1月に行なわれる「ヴィーガニュアリー」とは? 開催中キャンペーンの詳細や事例を紹介
イギリスの1月と言えば「Veganuary(ヴィーガニュアリー)月間」が注目されています。期間中、人々に植物性食品のみを摂取するように奨励するキャンペーンです。
2022年には62万人が参加し、1,540以上の新しいヴィーガン製品やメニューが発売されるほど、このキャンペーンはイギリスのトレンドとなっています。
この記事では、日本ではまだまだご存じない方が多いヴィーガニュアリーを紹介しましょう!
ヴィーガニュアリー開催中! 背景やトレンドになった理由とは?
1944年から存在するVegan(ヴィーガン)は動物に由来する食品を一切摂らず、動物製品を使用しない人々を指します。イギリスにはThe Vegan Societyという団体があり、ウェブサイトではどのようにしてヴィーガンになるのか、動物性の食材を使用しないレシピの紹介、ヴィーガンとしての生活をできるだけ簡単に楽しくするためのアドバイスなどを共有しています。
今回の記事で取り上げる「Veganuary」は、VeganとJanuaryを掛け合わせて作られた言葉です。
ヴィーガニュアリーとは?
ヴィーガニュアリーはイギリスの非政府・非営利団体です。環境を保護し、動物の苦しみを防ぎ、何百万もの人々の健康を改善する方法としてヴィーガンに移行することを奨励そして支援するために立ち上げられました。
2014年の団体設立と同時に、創設者であるJaneとMatthewがクラウドファンディングによってヴィーガニュアリーキャンペーンをスタートさせます。
キャンペーンの目的は4つ「参加者の増加」「企業への働きかけ」「世界的な運動の拡大」そして「認知度の向上」です。
アンバサダーには、ポール・マッカートニー氏の他、俳優、コメディアン、ニューヨーク市長、ラグビー選手、農家など様々な分野から多くが名を連ね「認知度の向上」に大きな役目を果たしています。
2023月1月のキャンペーンにはさらにユーモアが加えられ、より行動を促す過去の運動へのオマージュを込めた3つの広告シリーズを開始しました。3人のアンバサダーの1人にはイギリスTVシリーズ”Made in Chelsea”スターのTVパーソナリティ/ジャーナリスト/インフルエンサーであるLucy Watson氏を起用しています。
Veganuary Meet our ambassadors
ヴィーガニュアリーはイギリスにとどまらず、アメリカ、インド、ドイツ、メキシコなど世界に世界に拡がっています。
以下、2022年のレビューからその拡がりをみてみましょう。
- 2022年の参加者は629,000人。
- タジキスタンと北朝鮮を除く世界すべての国から参加者が集まった。
- 2.4億人がWEBサイトを閲覧。
この世界的な広がりに対して、企業もビジネスの機会として注目しており、2022年のヴィーガニュアリーのために、
- 800種類以上の製品が新販売。
- 740以上の新しいヴィーガンメニューがレストランで提供される。
といった新たなビジネス、サービスが開発されるほどのインパクトを生んでいます。
Veganuary 2022 Campaign in Review
イギリスでヴィーガンがトレンドの要因
このキャンペーンがこれほど大きな広がりを見せるには、イギリスでヴィーガンがトレンドになっている点に注目せざるを得ません。
Z世代
イギリスの若者に関するあらゆるものを扱うBeatfreeksのチャンネル「National Youth Trends」より紹介します。
「Z世代がいかにヴィーガンであるか?」の調査より
・32.5%(肉は食べるが減らしている28.3%+魚しか食べない4.2%)
→ 肉食をやめる・減らすための大きな動機の一つが環境保護運動になっており、意識的にアプローチをとる若者が増えている。
・16.9%(ベジタリアン11.5%+ヴィーガン5.4%)
その他が肉類を食べる(48.1%)、そして宗教的な食事(動物性食品をとらない・肉類を食べる)をしている(2.4%)になります。
さらに、食品小売業に情報、ニュースを提供するSupermarket News「Z世代は植物性食品購入の世代交代をリード」記事からも抜粋してみましょう。
「Z世代79%が週に一度は肉なしを選択、65%がより植物性に近い食生活を望むと回答。常に厳しい気候の現実を取り上げるニュースを目にする気候危機の時代に生まれた世代であり、環境に優しい食品という選択をすることで世界への影響について意識している。」
Supermarket News “Gen Z is leading a generational shift in plant-based food purchasing”
市場ではマクドナルドが「McPlant」でヴィーガンメニューに参入、大手スーパーマーケットや多くの企業が積極的に関わるようになるなど、サスティナビリティを考えるZ世代が納得する選択肢も確実に増えています。
インフルエンサーによるインパクト
もうひとつの理由として、インフルエンサーの人気があげられます。
イギリスでは数多くのヴィーガンインフルエンサーがSNSで積極的に情報発信をしていて、Z世代を中心とした多くのフォロワーからの支持を得ています。
インフルエンサー・マーケティング・プラットフォームStar ngage「2023年イギリスにおけるトップヴィーガン インスタグラム インフルエンサー」によれば、トップはフォロワー80万人以上を持つBOSH! By Henry & Ianです。以下もフォロワーが60万人といったインフルエンサーが続きます。
Star ngage “Top Vegan Instagram Influencers in United Kingdom in 2023”
また、セレブリティにも多くのヴィーガンがいます。例えば、F1レーサーのルイス・ハミルトン氏、俳優のタンディ・ニュートン氏、セレブシェフのゴードン・ラムゼイ氏など枚挙に暇がありません。
SNSを活かした発信は多くの人の目に触れ、さらにヴィーガン人口を増やしていきます。
食べ物以外のヴィーガン製品
ヴィーガンは卵や乳製品を含む動物性食品を口にしない人々を指しますが、食べ物以外でもそういった製品を購入することができます。
代表と言えるのがビューティ関連商品です。Vogueが「5 Completely Vegan Skincare Brands to tory for Veganuary」、そしてCosmetifyでは「Best Vegan Beauty Products to Try This Veganuary」の記事を掲載し、ヴィーガニュアリーに合わせたビューティ・スキンケア製品を紹介しています。
Vogue “5 Completely Vegan Skincare Brands to tory for Veganuary”
Cosmetify “Best Vegan Beauty Products to Try This Veganuary”
REN ヴィーガンスキンケア
サスティナビリティを重視したスキンケアを提供するのがRENです。
2000年設立以来、自然界でもっともパワフルな生物活性成分の利点を活かしたスキンケアで多様な肌ニーズに応えています。Clean to Skin, Clean to Planet.の考えがすべての決断の指針であり、生産、流通から販売促進の全段階で廃棄物を削減することに取り組んでいます。
ヴィーガンスキンケアには、ベストセラーの美容液を始め、クレンジングからボディウォッシュまで幅広いラインナップが揃っています。
ヴィーガンが自分の肌に直接触れるスキンケアにも希望に応える商品を求めるのは自然なことであり、ヴィーガニュアリーがそういった生活スタイルをスタートする機会として捉えられています。
企業のサスティナビリティとブランディングにも活用
ヴィーガニュアリーがユニークな点は、参加が個人に限られず、企業や職場が団体として関わることができる「The Veganuary workplace challenge」があるところでしょう。
Veganuary “workplace challenge”
このキャンペーンに参加する団体はヴィーガニュアリーから様々なサポートを受けることができるため、企業ブランディングへの活用がしやすくなります。
- オフィスに貼るポスターや各素材のダウンロード。
- ショッピングや食事計画のための情報を31日間サポートメールで受け取る。
- 職場に食堂がある場合、ヴィーガンメニューの開発に関してのサポートを受けられる。
- セレブにインスパイアされたレシピや低炭素・低予算の食事プランを31日間メールで受け取る。
これらのサポートを受け、社内で持ち寄りパーティ、チームでするランチ、チームでクッキングなど楽しい企画を実行します。さらにこれらの企画を行なうための寄付を集めるため、ヴィーガニュアリーはJust Givingキャンペーンを立ち上げる手伝いまでします。
このチャレンジに参加するベネフィットには以下のようなものが挙げられます。
- 従業員の健康と幸福を促進する。
- 環境保護に取り組んでいることを社会に示すことができる。
- 社員が楽しいチャレンジに参加できる。
- 公に参加することで素晴らしいPRの機会を得ることができる。
2022年には、イギリスの企業Harrods, Marks & Spencer、Volkswagen UK, Skyなど75社を含め、世界全体で100を超える企業が参加する大きな活動になりました。
このチャレンジには、多くの場合CEOをはじめとする上級管理職が関わります。企業としてキャンペーンに参加しリーダーが率先して従業員の健康促進やサスティナビリティへの姿勢をアピールできることは、企業のインターナル/エクスターナルブランディングにポジティブな効果をもたらすでしょう。
2023年ヴィーガニュアリーでのプロモーション事例
世界中の個人・企業に広がるヴィーガニュアリー。
キャンペーンに合わせて、さまざまなプロモーションが展開されています。
ここでは現在展開されているプロモーションの事例を紹介します。
ヴィーガニュアリー期間に行なわれる各企業のプロモーション
2023年のキャンペーンに合わせ、ブランド、レストラン、小売業者など様々な企業が割引や特別キャンペーンなどのプロモーションを行なっています。以下、紹介しましょう。
- Purezza
2015年、イギリスで初のヴィーガンピザを提供したのがPurezzaです。ヴィーガンでない友人を1月中に連れていけば、ピザが1枚無料サービスになります。
- yhangry
イギリスのBBC人気番組Dragon’s Den(ビジネスの企画を持ち込み投資を求める番組)で紹介されたyhangryは、プライベートシェフ派遣のビジネスを行なっています。1月末までにヴィーガニュアリーのコードとともにディナーパーティを予約すると10%割引になります。
- Marugame Udon
2021年7月にロンドンに初上陸した丸亀製麺もキャンペーンに参戦しています。Veganuary Specialsという限定メニューが新登場、5.95ポンド以上の注文でスタンプがダブルになります(2月13日まで)。イギリスで人気の日本食+ヴィーガンメニューを提供する日本企業がトレンドのキャンペーンに参加・支援することでプロモーションにつながっています。
他にもマクドナルド、大手スーパーマーケットなど合計77企業が、プロモーションとして今年のヴィーガニュアリーに参加しています。
Veganuary “Special offers and supporting brands”
Quorn
1985年に設立された代用肉製品の製造ブランドQuronも、「This January SWAP IT for Quorn, one bite at a time.」というキャンペーンスローガンと共にヴィーガニュアリーに参加しています。
この期間を良い機会として捉え、肉をQuornに置き換えることで、水や土地を節約し二酸化炭素量を減らすだけでなく健康的な選択ができると参加を訴えます。活動は学校における給食のための情報交換だったり、パブなど外食する場にキャンペーンを促進するためのデジタルコンテンツ、ヴィーガンレシピを提供するなど様々です。
ユニークなのは「Try our Veganuary calculator」。ヴィーガニュアリーの期間に肉をQuornに替えることで削減される二酸化炭素量を計算し可視化できます。キャンペーンに参加することでサスティナブルを考えた行動もできるというのはこの時代に大変マッチしたものとなっています。
Quorn | Try our Veganuary calculator
TESCO
TESCOは1919年創業、イギリス国内に4,000以上の店舗を持つ大手小売業者です。このキャンペーンへ参加し、ウェブサイト上でヴィーガンケーキ10選、植物由来の食材に替える方法、人気のレシピ紹介に加え、「Vegan meal planner」というツールを使用し消費者がヴィーガン食に変わっていくサポートをしています。
Vegan meal plannerでは、初めてヴィーガニュアリーへ参加する人、1週間を通してヴィーガン食をするためにインスピレーションが欲しい人、すでにヴィーガン料理が大好きな人、それぞれが料理にかけられる時間やヘルシー料理かどうかなどの質問に答えることで、”究極の平日食事プラン”としておすすめのレシピが提案されます。
もちろん、提案されたレシピに必要な食材は、TESCOのオンラインサイトでショッピング可能。
TESCOによれば、このような選択肢の多さは消費者の気持ちを高め、昨年のヴィーガニュアリーの売上は急上昇したということです。
2023年の結果が楽しみなところでしょう。
Veganuary sales boom with new plant-based meal deal as demand for no and low alcohol also rises
今後も世界で拡大が期待されるヴィーガニュアリー
2014年にJaneとMatthewの2人が立ち上げたヴィーガニュアリーは、今や世界中に広がる大きな動きと変わりました。
ヴィーガニュアリーの活動とそれに対する支持の高まりは、サスティナブルな世界を志向する消費者の価値観と消費マインドのシフトを明確に示していて、海外に向けたマーケティング、プロモーションにおいて無視できない要因になるでしょう。
記事をお読みになって、世界の流れやマーケティングの参考になれば幸いです。
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