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海外マーケティングにおけるサスティナビリティ事例

サスティナビリティに対する意識の広がりから、グローバル市場においても、多くの企業がサスティナビリティを軸にしたマーケティングを実施しています。そのため海外へのビジネス展開を考えている、またはこれまでの実績をさらに向上させたいとお考えであれば、サスティナビリティの視点でのマーケティングが重要となっています。

そこでこの記事ではサスティナビリティの定義とともに、イギリスでの一般消費者マインドなど事例を紹介します。

 

 

「サスティナビリティ」と「SDGs」の定義とは?

サスティナビリティは英語でSustainability、「持ちこたえる力・持続可能性」という意味を持ちます。形容詞のサスティナブル(Sustainable)は「維持できる・継続できる」の意味で、事業や活動を維持し長く続けていくための実現性を指す言葉として用いられています。

そしてサスティナビリティと同じ使われ方をする言葉として、よく聞かれるのがSDGsでしょう。

では、まずサスティナビリティとSDGsそれぞれの言葉の定義を確認することから始めましょう。

 

 

サスティナビリティとは?

今や、多くの業界でサスティナビリティの観点から生まれた商品やサービスが提供されています。環境や社会に配慮した企業に投資するサスティナブル投資、再生可能で将来の可能性があるサスティナブルエネルギー、そして世界最先端のエコスクールであるグリーンスクールなど教育の分野でも持続可能性を考慮した事業が行なわれています。

 

国連(国際連合/United Nations)では1987年、サスティナビリティを以下のように定義しています。

 

”将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、現在のニーズを満たすことである”

United Nations – Sustainability

 

資源が無限ではないことを前提とした長期的な優先順位や資源をどう使うのかを考え、子どもや孫に残せる世界を意味すしています。

 

 

SDGsとは?

一方、SDGsは「持続可能な開発目標」を意味します。

SDGsはSustainable Development Goalsの略であり、Global Goalsとも呼ばれています。SDGsに17のゴールがあることは皆さんもご存知かもしれません。2015年、国連加盟国によって採択されて以来、貧困や必需品などの欠乏に終止符を打つためには、健康と教育の改善、不平等の是正、経済成長を促進していくとともに、気候変動に取り組む必要があることを共通の認識としています。

国連のウェブサイトを見ると、17の目標についてそれぞれ詳しく載っています。以下、ご参考にしてください。

United Nations – The 17 Goals

 

 

 

メインとして使われるのは「Sustainability」

どちらも「持続可能性」を意味するSustainabilityとSDGs。それぞれ使われ方に違いがあるのでしょうか?

 

インターネットで「Sustainability UK」または「SDGs UK」で検索すると気づくことがあります。

Sustainabilityの検索結果はSDGsよりもビジネスに関連したものが多く、一方、SDGsではGOV.UK(イギリス政府のデジタルサービス)やBritish Councilという公的な情報がより多く表示されます。

 

日本企業が海外マーケティングや海外プロモーションを実施する際、ターゲットとなる国の事情を理解することは必須です。

ビジネスにおいてはサスティナビリティ、行政・公的機関においてはSDGsのワードを使用することが、イギリスにおいて適切だと言えます。

 

 

ヨーロッパの企業が積極的に取り入れるサスティナビリティ

ここでは、ヨーロッパの企業が積極的にサスティナビリティを取り入れていること、また一般消費者マインドの視点からDeloitteの調査結果を紹介します。

 

 

Earth.Orgが発表した「The World’s 50 Most Sustainable Companies in 2022」

環境ニュースの提供およびデータプラットフォームを運営するEarth.Orgが発表した「The World’s 50 Most Sustainable Companies in 2022(2022年度 世界でもっとも持続可能な50社)」によれば、その内訳はヨーロッパが16社、アメリカ•カナダが20社、その他(中国、香港、台湾、韓国、シンガポール、オーストラリアや南米が11社、そして日本企業3社がトップ50です。

 

上位ではデンマーク、フランス、イギリス各国の企業数社がA+、A、A-を獲得しています。日本企業で言えば3社、Sekisui Chemical Co LtdがB+、Eisai Co LtdとEcolab IncがBでランクインしています。

全体で見れば、持続可能な企業としてヨーロッパと北米が積極的に取り組んでいることが明確です。

 

Earth.Org – The World’s 50 Most Sustainable Companies in 2022

 

 

一般消費者が受け入れるサスティナビリティ

次に、消費者の行動意識から見るサスティナビリティの側面も紹介しましょう。Deloitteの調査から一般消費者マインドをみていきます。

 

 

Deloitteの調査からみる一般消費者マインド

Deloitteが3年継続して実施しているサスティナビリティに関する調査から、消費者のマインドの変化が読み取れます。

 

  • この3年の間に、消費者がサスティナビリティと環境を意識した意思決定をするようになった。
  • 消費者はより地元や季節にあった買い物をするなど、より持続可能なライフスタイルを選択した。これは新型コロナウイルスの影響によるものであることが分かった。
  • 2022年のインフレとサプライチェーンの混乱の影響で選択肢と機会が減少するなか、消費者は耐久性の高いもの、再利用・修理が容易な商品を選ぶようになった。

Deloitte – How consumers are embracing sustainability

 

調査では、過去12ケ月でより持続可能なライフスタイルを採用した人が急増していることが分かったと述べられています。2021年との比較では、必要なものだけを買う(+20ポイント)、肉の消費量を減らす(+9ポイント)、二酸化炭素排出量の少ない交通手段を選ぶ(+11ポイント)などが内訳となります。

 

新型コロナウイルスの影響は大変大きいものでしたが、これまでの生活スタイルを振り返る良いチャンスとなったことも事実でしょう。

 

サスティナビリティは企業側の取り組み、そして消費者のマインド双方にとって重要であることが明確であり、海外マーケティングや海外プロモーションを検討する際には不可欠なものであることが分かりました。

 

 

 

 

イギリス企業のサスティナビリティへの取り組み事例

イギリスでは、さまざまな企業がサスティナビリティへの取り組みを進めています。その取り組みは二酸化炭素排出量の削減に留まらず、従業員のダイバーシティ促進、原材料生産環境の保全など多岐に渡ります。

フィットネスジムとコーヒーショップでの取り組みの事例を紹介します。

 

 

フィットネスジム The Gym Group

フィットネスジムを運営するイギリスのThe Gym Groupは、すべての人々のフィットネスへの障壁を打ち破ることを目的に、サスティナビリティを事業の中核に据えました。

The Gym Group – sustainability overview

 

取り組みの内容は、

  • 炭素排出量を削減する
  • 従業員の健康、安全、ウェルビーイングを守る
  • 顧客情報とプライバシーを保全する
  • よいキャリア機会、公平な給与と条件を提供する
  • 職場での多様性、包括性、公平性を構築する

と幅広く、The Gym Groupのエグゼクティブメンバーが参加するサスティナビリティ委員会を設立し、全社的なミッションとして積極的に取り組んでいます。

 

特に炭素排出量の削減に関しては、イギリス初の”カーボンニュートラルなジムチェーン”になることを目指し、Simply Sustainable社をキーアドバイザーに迎えています。

Simply Sustainableはロンドンを拠点にするグローバルコンサルティング会社です。社名にもSustainableが使われている通り、企業のサスティナビリティのためのコンサルティングを専門に行っています。

Simply Sustainableが、The Gym Groupが排出する炭素量を計算し、解説と検証を行なうことで、残存排出物に対する責任を果たすことをサポート。その結果、The Gym Groupは社会的な意義のあるカーボン削減プログラムを選択することができたのです。

Simply Sustainable – Supporting the UK’s first carbon neutral gym chain

 

フィットネスジム運営においても電力やガスの購入、水の使用、廃棄物などの形で炭素を排出してしまいます。The Gym Groupはこれらのデータ集めて見直し、炭素排出量を減らす運営体制の改善に取り組んでいます。

また、サスティナビリティに特化したコンサルティング会社が存在するということは、それだけサスティナビリティが時代に必要なものであることの証明であり、イギリス社会では真剣に持続可能な社会について責任を負う義務が理解されていると言えます。

ジムに通うイギリス人は多く、Deloitteなどの調査結果からも、行くならサスティナビリティが考慮されたジムを選ぶ人が必ずいるでしょう。

 

 

 

 

 

コーヒーショップチェーン COSTA COFFEE

イギリス最大手コーヒーショップチェーンCOSTA COFFEEも、サスティナビリティに企業として取り組んでいます。

 

COSTA COFFEE – sustainability

 

COSTA COFFEEのサスティナビリティページで真っ先に目に入ってくる言葉が「COFFEE WITH COMMITMENT」です。Commitmentは日本語でもコミットメントとして馴染みのある責任、約束、義務といった意味を持ちます。

 

COSTA COFFEEのコミットメントには、

・すべてのコーヒーとココアをRainforest Alliance認証農園から調達する(イギリス初)。

・すべての使い捨て包装には、平均50%以上のリサイクル材を使用する。

・気候変動に対する企業責任として、炭素排出量を2030年までに50%削減、2040年までにゼロにする。

・全世界で毎年300万ポンドの寄付を集め、コミュニティを活性化させ地域社会との有意義な関わりを通じて、社会への影響を倍増させる。

が掲げられ、コーヒーというプロダクトだけでなく、環境とコミュニティに対しても責任を果たすことに言及し、目に見える原材料だけでなく、目に見えない原材料も含めて、完璧に仕上げられた一杯のコーヒーに注がれるべきものを考えている、とコミットメントしているのです。

 

日本国内のフードサービスでも、プラスティックの使用を取りやめるなど、サスティナビリティへの取り組みがとても進んでいますが、COSTA COFFEEが取り組んでいるような範囲と数値でのサスティナビリティへの取り組みは、まだ国内では例を見ません。

 

COSTA COFFEEがサスティナビリティに関して真剣に取り組んでいること、社会や環境に対して企業としての責任をはっきり約束していることが分かる事例を紹介しました。

 

 

サスティナビリティのキーは社会的責任とコミットメント

サスティナビリティをマーケティング戦略として活かすのであれば、それは企業理念と強いコミットメントに裏付けされたものでなければなりません。

サスティナビリティへの取り組みは企業の社会的責任に大きく関与します。海外では企業の社会的責任が大きく求められ、企業も自ら自覚を持ち積極的に対応しています。COSTA COFFEEで言えば、Policy&Reportで人権に関わる提言が述べられています。

 

COSTA COFFEE – Costa Coffee Modern Slavery Statement

 

多様性を尊重し、チームメンバーに対する安全性を提供するとともに、拘束労働や現代版奴隷制度などあらゆる形態の強制労働の禁止をしていることを明確に発表しています。

このような海外企業の活動の範囲そして意義の深さは日本と比較すると質の違いを考えさせられます。海外の消費者・ステークホルダーに対してサスティナビリティへの取り組みを伝えるには、企業責任を持って持続可能な社会を作り出していくというメッセージを強く訴えなければ、納得させることはできないでしょう。

 

 

本記事では、サスティナビリティの多面的な重要性を解説しました。持続可能性は企業の長期的な成功に不可欠であり、特に海外プロモーションにおいて競争優位を築くカギとなります。

より具体的なサポートやサスティナビリティ戦略設計に興味がある場合は、お気軽にご相談ください。

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