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イギリスで急成長のフェスティバル業界。国民性が反映された集客事例を紹介。

2022年はエリザベス女王の死去、そして新国王チャールズ3世の即位というイギリスにとって歴史的に大きな年になりました。

暮らしを振り返れば、春には陽性者の隔離を含む新型コロナウィルスに関するルールが全廃になりました。夏にはパンデミック前の生活にほぼほぼ戻り、心待ちにしていたホリデーを予約したり、外出をして人と会うことを楽しむという生活が戻ってきたのです。

それに比例するかのように、2022年のイギリスではフェスティバル業界が著しい成長を遂げています。

そこでこの記事ではイギリスのフェスティバル業界の動き、実際のイベント情報などを紹介。イギリス人の国民性を考えた上で、フェスティバルの特徴を解説しましょう。

 

 

2022年、イギリスでもっとも成長しているフェスティバル業界

 

1971年以来、業界の動向リサーチをする調査会社IBIS Worldによる「Fastest Growing Industries in the UK by Revenue Growth (%) in 2022」において、イギリス国内で2022年に急成長している産業トップは3位が空港業、2位がカジノ業、そして1位がフェスティバル業界です。フェスティバル業界の売上高成長率は848.0%にもなり、2位のカジノ業の480.2%に大きく差をつけています。

フェスティバル業界が848.0%とダントツなことがひと目で分かります。

 

 

 

 

業界の定義 – フェスティバル業界とは?

 

ここで、この調査におけるフェスティバル業界がどのようなものなのか、業界の定義を紹介してさらに理解を深めましょう。

「イギリスで開催されるフェスティバルや音楽ライブの運営を行なう産業。この業界の事業者は、チケット販売や飲食物販売などのホスピタリティ収入によって収益を得ている。また、音楽ライブイベントのプロモーター、エージェント、プロダクションサービスも含まれている。」

この定義で説明されたフェスティバル業界の各サービスが新型コロナウイルスの発生によって、真っ先に影響を受けた業界ということは日本における状況を考えても記憶に新しいことかもしれません。

 

イギリスの場合はパンデミックが起こるなかロックダウンが施行され、日本のニュースでも大きく取り上げられました。この間は必需品の買い物や治療のための外出、ウォーキングなど住まいの周りでの短時間のエクササイズ以外は禁止という自由が制限される生活。フェスティバル業界関連に限らず、上述の調査でランクインしたどの業界のサービスにも大きなインパクトがあったことは明白だったのです。

そして、イギリス政府がliving with Covid-19と明確にした後、急成長している業界がフェスティバル業界です。どのような理由からの結果だったのか興味深いとお考えの方がいるのではないでしょうか?

 

 

 

イギリス国民の行動心理から見るフェスティバル業界の成長

 

マーケティングに役立つものに行動心理学があります。マーケティングにおいてもマーケティング心理学があり、集約を図るために消費者が求めるニーズを理解し戦略を立てることがビジネスの成功に不可欠です。

ここでイギリス国民の行動心理をみてみましょう。

※イギリス国民と言えども個人差があること、またイギリスにはイギリス生まれでない多くの多国籍の人々が住んでいることを書き添えます。

 

 

 

自由を愛する国民性

 

国民性を表すものとして、イギリス人が”liberty”を大切に考えていることを挙げないわけにはいきません。liberty(リバティ)とは選択の権利や自由、また束縛からの解放・自由を意味します。

 

 

 

ここで一つ、イギリスのパブ文化とlibertyを例にして事例を紹介しましょう。パブ文化とは、お酒を飲むだけでなくソーシャルの場としてパブが古くから地元に根付いているという意味になります。

2020年7月5日のBBC Newsに「ロックダウン後の初めての夜間外出」というタイトルの記事が掲載されました。北イングランドの都市ニューカッスルのパブでビールを飲む若者2人を取材、3ケ月以上ぶりに「まともなパイント」を飲む様子が動画で映されています。パンデミック前の雰囲気に完璧には戻ってはいないものの、友人とソーシャライズができることが嬉しいこと、街の雰囲気もポジティブだと感じ、少しばかり従来の生活が戻っていると感じているんだということをリポーターへ話しています。規制が残るなかルールを守って、今の自由を楽しむという国民性が現れています。

 

 

2022年4月1日、世界の国々と比べても早々にすべての新型コロナウイルス対策の法的規制を撤廃したイングランド。コロナウイルス再拡大の懸念と比べても、改めて自由を手にしたイギリス人の喜びは大きいものでした。それまでの規制がなくなり、パンデミック前の暮らしに戻るのに時間はかかりませんでした。

 

パブやバーで言えば、物価高を考慮しても2022年はパンデミック前に対して99%とも言われる大幅なリカバリーが期待されています。この数字は、パンデミック前の生活がほぼ戻ったイギリスで、イギリス人の消費マインドもコロナパンデミックを脱したことを表しているでしょう。この予測もイギリス人の国民性が大きく関わっていると考えられます。

 

 

 

 

共有すること、コミュニケーションを大切にし、チャリティに関心の高い国民性

 

イギリス人はイベントだけでなく、晴れた日には外に出かけることが大好き。1人で行動する人もいますが、簡単なランチを持って日の当たる公園でリラックスすることを好みます。おしゃべりが大好きなため、そんなときは誰かと出かけることになります。

人と集まって何かをともにする例で言えばフットボール。公園にサッカーボールを一つ持っていけば、見知らぬ人たちが入ってきて一緒にプレーすることがよくあります。また、ロックダウン中には毎週木曜、医療従事者への感謝と敬意を表すために軒先に出て皆で拍手をしました。コミュニケーションの達人であるイギリス人は人と集まり何かを共有すること、コミュニケーションをとることを大切に思う国民性があります。

先のエリザベス英女王の死去に関し、棺を弔問するために多くが列に並ぶことになりました。長い人ではその待ち時間は24時間にも及ぶとともに、元フットボールイングランド代表のベッカム氏も13時間、他の国民と一緒に並んだことが話題になりました。女王へのリスペクトとの思い出の共有、そして13時間をともにした人たちとはきっとコミュニケーションをとっていたことでしょう。

自由を愛すイギリス人たちがコロナウイルスの規制が全廃されたとき、様々な場所へ出かけ、楽しいこと素晴らしいことを誰かと共有することを改めて切望しました。それにはフェスティバル業界による国内のイベントなどに参加することが彼らの行動心理に叶うものだったのです。

 

そして、キーとなるものにチャリティがあります。国内にはおよそ17万以上のチャリティ団体があり、イギリスほどチャリティ精神が高い国もないでしょう。チャリティにも、体験の共有そして助ける人、助けられる人のコミュニケーションが深く関係しています。

例えば、フードバンク。イングランドには194団体もの独立したフードバンクがあり、コロナウイルスによるパンデミック初年では約210万人に食料品が配られました。食料を取りにいけない家庭へ配達するために多くの一般市民がボランティアをしたこともチャリティ精神をよく表す出来事でした。

 

 

 

 

イギリスで注目される2つのフェスティバル事例

それでは、イギリスにおいてどのようなフェスティバル事例があったのか、フードフェスティバルそしてミュージックフェスティバルを取り上げて紹介します。

 

フードフェスティバル

 

食べ物関連のフェスティバルとして、ヴィーガンのためのイベントを紹介しましょう。

イギリス政府ウェブサイトによると、イングランドの18歳以上の80%が2021にライフスタイルを変える決意をしたことが分かりました(5,000人対象)。

 

健康志向になったイギリス人はベジタリアンとヴィーガンになる人も増加中。これはSNSで常に食のトレンド情報など得るデジタル世代、イギリスのZ世代が含まれます。さらに、イギリスでは毎年1月にはveganとJanuaryを掛け合わせた「Veganuary」月間があるほど積極的な活動が行なわれています。そもそもヴィーガンという言葉はイギリスで40年代に定義されましたが、ここ近年の変化は大きく注目されているのです。

 

 

ヴィーガンがサスティナビリティを考慮した食生活としてさらに人気が高くなったため、食のフェスティバルにも当然それが反映されます。

イギリスでヴィーガンのフードフェスティバルを探したいときにはvegan festival UKで検索すれば多くのサイトが見つかりますが「VEGAN EVENTS UK」や「Viva! VEGAN TOWN」がおすすめです。

 

 

VEGAN EVENTS UKのミッションは地元のヴィーガンビジネスを支援し、ヴィーガンになることがいかに簡単であるかを示し続けることです。ヴィーガンであること、ヴィーガンになることを共有するイベントとして多くの人が参加します。そしてイギリスはボランティア精神が高い国であり、イベントによっては100%ボランティアで運営されるチャリティイベントになることも。来場者だけでなく運営も体験型であることはまさしく”共有すること、コミュニケーションを大切に思う国民性”が活かされた形だと言えそうです。

 

 

 

ミュージックフェスティバル

 

デジタル化が進んだ音楽業界でも、ライブならではの高揚感は未だ健在です。イギリスにおける音楽フェスティバルの歴史は古く、60年代に始まります。創造的で自由、反体制的なものが現在では誰もが参加できるイベントに変わりました。

毎年夏に行なわれるBBC Promsは8週間に及ぶクラシックコンサート、120年以上の歴史を誇ります。

そして、その規模でも有名なミュージックフェスと言えばGlastonbury。屋外で5日間にわたって約20万人が参加するイベントは、大物アーティストはもちろん、小さなステージやパフォーマンスエリアで何千人ものアーティストが出演します。人気も高く、オンラインでチケットの買い方ガイドが多く見つかるほどです。

 

 

コロナウイルスのパンデミックで2020年と2021年がキャンセルになった後、2022年6月に復活しました。待ちに待たれたGlastonburyの活気ある雰囲気はシンプルに想像できるのではないでしょうか?

Glastonburyのスタッフはほとんどがボランティアです。収益から数百万ポンドをチャリティ団体に寄付、ここでもチャリティというキーが活かされています。

 

PromsやGlastonburyだけでなく、ロンドンをはじめイギリス国内で多くのアーティストがコンサートやライブを行ないます。ミュージックフェスに友人と行けばその場所に一緒にいるという特別感、そしてその時間の共有という素晴らしい体験ができます。また、知らない人に囲まれて共通の体験を楽しむという自由によって、自分の本当の個性を表現したりアイデンティティを感じることができる点こそがイギリス人が求める醍醐味の一つと言えます。

 

最後に、エンタメ全般のチケット販売を手掛けるticketmasterによる「State of Play: Festivals UK」を紹介します。フェスティバルに関する様々な調査結果やフェスティバルに行く人のペルソナ、フェスティバルとサスティナビリティの関係などなど、面白い内容になっています。

調査の一つにフェスティバルには誰と行くのかという調査結果があります。ダントツで61%は友人です。共有したりコミュニケーションを大切にする国民性がはっきりと現れているのではないでしょうか。

ご興味があればぜひ、下記サイトをご覧ください。

 

 

 

 

外出を楽しむ生活が完全に戻ったイギリス

 

もともと人とコミュニケーションをとることが好きなイギリス人にとって、パンデミックそしてロックダウンはかなり厳しい状態であったことは確かです。フェスティバルという言葉は幸福感、結束、平和を目覚めさせるという意味を持ちます。コミュニケーションの達人であるイギリス人、ボランティア先進国のイギリス、さらに進むサスティナビリティなど、フェスティバル業界が提供するイベントはこれらの要素をすべて集めた形の理想的なものなのです。

 

IBIS Worldの調査結果は当然だったとも言えるのではないでしょうか?

 

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