【海外デザイン】台湾で見られる日本語の広告
東京から飛行機で3時間程度で到着する台湾には多くの日系企業が進出しており、台湾の広告には非常に多くの日本語が使用されています。
今回は、台湾で頻発する日本語を使った広告について、日本と台湾の関係から、実際の広告事例、そしてなぜ広告に日本語を使われているのかまで、ご紹介いたします。
日本と台湾の関係について
台湾における日本領事館に相当する「日本台湾交流協会」が2022年に行った最新の世論調査によると、「最も好きな国・地域」という質問に対し、日本と答えた人が60%を超えたと発表しました。これは次点の中国(5%)やアメリカ(4%)と比べて圧倒的で、「親しくすべき国」としても2位のアメリカの24%を大きく上回る46%の人が、日本と回答しています。
そして、日本と台湾の関係に触れるために避けられないのが、日本統治時代の事です。かつて台湾は、1895年から1945年まで日本が統治をしていた期間があります。そのため、台湾で生活していると、少なくなってきたものの、日本語を流暢に操る年配者に会うこともあります。また、日本統治時代(日治時期)に建てられた建物は、現在でも台湾の街に多く残っており、近年は日本統治時代の建物をリノベーションしたスポットが、人気スポットとなっています。
台湾における日本ブームとその定着
台湾において、1990年代に「哈日族(ハーリーズゥー)」と呼ばれる「日本オタク」の人たちが社会現象となった時期がありました。「哈日族」たちは特に日本のアニメやドラマなどサブカルチャーを好んだ人のことを指す言葉で、単なる一時的なブームで終わることなく、現在でもケーブルテレビでは日本語専門チャンネルが終日、日本のテレビ番組を放映していたり、多くの日本のアニメや映画、ドラマが台湾で公開されています。
加えて、帝国データバンクの調査では、2022年7月時点で約3100社が台湾に進出しているという結果が出ています。実際に台湾、特に台北を歩いていると、多くの日系飲食店や小売店を目にします。またニトリやユニクロは、都市部以外にも多く出店しており、中でも無印良品はここ数年で台湾にローカライズした台湾限定商品を販売。日本の女性誌などにも取り上げられており、台湾土産の新定番として注目されています。
このような社会背景から、多くの台湾人は日本文化や商品が身近な環境で生活をしています。
日本企業3100社が台湾進出 5割が中国にも進出 (株式会社帝国バンク)
漢方茶やポップコーン、ラーメンも!台湾の「MUJI無印良品」から台湾限定商品が続々と登場!(CREA Web)
台湾で使われている日本語を使った広告事例
日本語CMをそのまま流す日系企業と日本人俳優が出演するローカルCM
九州と同じぐらいの国土面積でありながら多くの日系企業が進出している台湾では、広告においても日本語を見聞きする機会があります。加えて、日本の有名俳優が台湾のローカルCMに出演するケースも多く、最近では俳優の佐藤健さんが台湾でCM撮影をしたことが話題となりました。
佐藤健、茶飲料CM撮影 台湾の人々「ストイック、呼んでもらって光栄」 (中央社フォーカス台湾 – 2023年4月27日)
ここでは、実際に台湾で公開された日本語が使われている広告や日本人俳優が出演している広告事例についてご紹介いたします。
SK-II
日本で誕生した化粧品ブランド「SK-II」は、日本だけでなく台湾でも人気のあるブランドです。長くCMキャラクターを務めた綾瀬はるかさんは、台湾にて多くのテレビドラマが放映されている関係から、多くの人に知られている日本人女優の一人であり、日本で放映されている広告が、中国語字幕付きでそのまま台湾でも放映されています。
元々台湾では、歴史的経緯からテレビ放送では通常放送であっても基本的に中国語字幕がつけられて放送されている背景があります。そのため、このような形でも台湾の人々は特に違和感を感じないということも大きいかと思われます。
セブン-イレブン
台湾でも多くの店舗を展開する「セブン-イレブン」と、乃木坂46のメンバーとコラボレーションした広告が放映されました。日本のドラマやアニメと同様、日本のアイドルグループも台湾に多くのファンがいることもあり、キャンペーンに採用されたと思われます。
実際にYouTube上に上がったこのCMの再生回数が140万回以上を超え、コメント欄には「乃木坂46とのコラボレーション商品、いいね!」「みんな可愛い!セブン-イレブンの商品を食べてみたいです」などといったコメントの書き込みも多くみられます。
いすゞ
少し毛色が違うのが、日本の自動車メーカー「いすゞ」のテレビ広告。2019年に公開された60秒バージョンでは、日本でも流れているあの有名CMソングを採用。歌詞を中国語に翻訳した字幕と、日本語の歌詞の字幕がつけられて公開されています。
広告内では、いすゞのトラックを使って仕事をする台湾の人々に焦点を当てた構成で、最後に台湾の人々が、あの有名ソングを日本語で歌う様子が上映されています。あの日本の力強いイメージソングと違う、暖かい雰囲気の内容に、YouTube上のコメント欄でも「感動した!」「最後にみんなが歌うところがとても好きです」などと好意的なコメントが寄せられています。
原萃
台湾で日本人が登場する広告で、一番目にすると言っても過言ではないのが、コカ・コーラ台湾が発売しているお茶ブランド「原萃」に出演する阿部寛さんです。2017年からCMキャラクターとして採用されており、街では阿部寛さんが大きくプリントされたラッピングバスなどを見かけることがあり、YouTube、テレビCMともによく目にします。2023年3月に公開されたブランド10周年を記念した動画にも出演しており、公開1ヶ月で300万回再生を超えるなど根強い人気を誇るシリーズとなっています。
「なぜここで日本語?」思わず目を疑う日本語表記
台湾では、台湾製品であっても広告や商品パッケージの一部であえて日本語で書かれているものも多く目にします。中でも、日本を連想させる商品、特に中国語で「日式(日本式・日本風)」と書かれた商品には多くの日本語が入っています。
その他の傾向として「高級感」「良いもの」をアピールするために日本語をあえて入れている傾向も見かけます。
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そのため、その雰囲気を作るためだけに日本語を入れたり、助詞「の」をピンポイントで使う事例なども散見されます。中でも「の」は、中国語の「的」にあたることから、台湾の方々も意味的に何となくわかるようで、台湾で最も認知されている平仮名であると言えるでしょう。
さらに、2021年には商品名がそのまま日本語になった飲み物が発売されました。その商品名は「焼く」。公式ホームページを見ると、「長時間かけて優しくじっくり煮詰めた牛乳を日本風のパッケージで、温かみのある味わいに仕上げました」とあることから、おそらく「日本っぽい」を表現するために、「焼く」という名前にしたと思われます。日本人から見ると「焼くはちょっと違うのでは?」と違和感を感じてしまいそうですが、今でもコンビニなどで販売されている様子から、人気商品となっているようです。
CMでは子どもがお母さんに話しかけるシーンで日本語が使われています。商品名が「焼く」とナレーションされていますので、ぜひご覧ください。
日本語が多用される理由を台湾人に聞いてみた
では、このように日本語が多用される台湾の広告について、当の台湾人たちはどう感じているのでしょうか?
何人かの台湾人たちに聞いてみると、やはり「日本=品質が良いもの」というポジティブなイメージがあることから、そういった効果を期待して、日本語を多用する傾向があるのでは?ということでした。
前述した「日本台湾交流協会」が行った調査でも、日本に対するイメージとして「自然が美しい(59%)、きまりを守る(59%)が最も多く、豊かな伝統と文化を持つ(53%)、経済力・技術力が高い(51%)など、日本に対して真面目でしっかりしたイメージを持っている人が多いことがわかります。そのためか、新築の分譲マンションの屋外広告などでも日本語が使われていたり、マンションの名前に「軽井沢」や「東京」など日本の地名をつけるケースも目にします。
またナレーションについても、台湾人クライアントから「中国語よりも日本語のナレーションの方が、おしゃれな感じがするから日本語を採用したい!」と言われ、実際に日本語ナレーションが採用された事例を耳にしたことがあります。
このようなことから、おそらく私たち日本人が、英語やフランスで書かれた広告やナレーションがオシャレに感じるのと同じような印象を、台湾人は日本語に対して持っているといえるのではないでしょうか。
まとめ
ご紹介したように、台湾の広告の中には日本語を使った表現が散見されますが、その中でも台湾に進出する多くの日系企業は、台湾人の日本に対するイメージを理解した上で、ローカライズしていることがよくわかります。
しかし、台湾が親日的という理由だけで、日本と全く同じプロモーションを行った結果、あまり効果が振るわなかった事例もあります。そのため、台湾人の心理や考え方を把握し、それに合わせたプロモーション戦略を練ることが、台湾人にしっかり訴求できる広告プロモーションを行う上で、とても重要となります。
台湾でのプロモーションをお考えの方はお気軽にお問い合わせください。