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【海外ブランディング】イギリスで見かけた日本食・日本商品からウケるデザインを考える

海外進出時の最も重要なマーケティング戦略のひとつであるブランディング。とくに日系企業の知名度が比較的高い中国・韓国や東南アジア圏とくらべると、ヨーロッパ市場では日本で使われているブランドカラー・ロゴ・企業イメージに至るまで、現地の消費者にとってはすべてが新しい情報になり、ブランドをゼロから浸透させていく必要があります。

現在、イギリス市場では日本発のブランドだけではなく、現地企業が日本食や日本にインスパイアされた商品を数多く販売しており、成功を収めています。

 

この記事ではそういったイギリス現地発の商品・ブランドを集め「イギリス人の好むデザイン」を分析していきます。

またイギリス進出後に現地向けローカライズに成功し、現地で人気を得ている日本企業の例も紹介します。

 

 

 

イギリスの日本食ブランドとパッケージデザイン

実際にイギリスのスーパーではどんな日本食が販売されているのでしょうか?

こちらは大手チェーンのスーパーで販売されている豆腐の商品です。

 

Tofoo

パッケージはヘルシー志向の消費者を意識し、自然な色合いとシンプルな色使い。TOFOOというシャレの利いた商品名はイギリス人がイメージする日本語のサウンドを表現しています。ちなみに味も日本の豆腐とはかなり違います。焼き豆腐のように硬く下味もついているのでそのまま肉の代用品として食べる消費者が多いようです。

 

こちらは味噌のパッケージです。

Miso Tasty

味噌を瓶で販売することは意外に思われるかもしれませんが、欧米では食品や調味料は缶や瓶詰めで輸送・販売されるのが一般的です。

 

 

こちらはカップ麺のKabuto noodlesという商品です。

Kabuto Noodle

カップ麺は日本では企業が激戦を繰り広げる市場ですが、欧米では20年程度前から浸透しはじめました。現在では、日本のメーカー・日清や味の素の商品の他、中国・アジア発のブランドをスーパーで購入することができます。

イギリスではこのようなシンプルでスマートな印象のパッケージデザインがよく使われます。調理写真やイメージキャラクターはなく、キャッチコピーや文字の使用も少なめです。

 

 

こちらはイギリスのスーパーで無料配布されているカツカレーのレシピの写真です。

TESCO

日本人がイメージするカツカレーとは大分違いますよね。日本では「カツが大きくてカラッと揚がっている」や「量がたっぷり多い」といった、カレーのおいしさを伝える味・食感・新鮮さなどにフォーカスした写真が主流です。ですが、イギリス人にとって日本食は新しいもの。モダンでおしゃれなイメージのフードコーディネートが常に求められます。味を優先するよりも、グリーンのインゲン豆やライムを差し色にして鮮やかな印象にまとめられていますね。

 

 

 

イギリスで販売されている抹茶のブランディング

イギリス企業の参入が多い日本食のひとつが抹茶です。健康食のイメージに加え、イギリス人の口に合う抹茶は、軽く少量でも単価が高く利益率も高いため、日本やアジア圏から抹茶を輸入し、自社のお茶ブランドを立ち上げている企業が数多く存在します。

Mughty Matcha

こちらの会社では、日本らしさをイメージしてコミックテイストの抹茶のキャラクターがパッケージに登場しています。

 

 

 

イギリス発日本食の外食チェーン

食品業界以上に日本食の参入が激しいのがレストラン業界です。中でもYo! Sushiは1997年にロンドンにオープンしたイギリスの回転寿司チェーンで、イギリスの一般ユーザーに日本食を広げるきっかけの一つになりました。現在は全国の主要駅・空港・ショッピングセンターなどで利用できる大手チェーンに成長しています。

Yo! Sushi – Instagram

味付けやメニューは開発チームが日本の流行を研究しながら考案されているそうですが、ブランディングはオープン当初から徹底して現地消費者向けに展開しています。

 

Yo Sushiがロンドンの地下鉄構内に出していた広告のデザインです。

 

こちらはショッピングバッグのデザイン。

 

 

またYo! Sushiの競合であり日本をテーマにしたヘルシー志向のテイクアウト店にItsu(イツ)があります。

Itsu

こちらのデザインは同社の企業紹介ページから抜粋したものです。寿司と箸を使って時計を表現する発想が面白いですね。このような遊び心のあるスタイリングは日本ではあまり採用をしない企業が多いように見受けられますが、イギリスでは王道のデザインで大手のスーパーや外食チェーンで多用されています。

 

 

 

イギリスで大ブームの日本食 丸亀製麺のブランディング

では日本のブランドがイギリスに展開するときには、どんなブランディングが適切なのでしょうか?

Marugame(丸亀製麺)の事例をご紹介しましょう。

Marugame Udon

同社は2021年7月にロンドンに初号店をオープン。その後、急速に店舗数を伸ばし、現在英国内に11店舗を展開、2023年の夏にはロンドンの主要ターミナル駅であるリバプールストリート駅に12店舗目が開店する予定です。

イギリスでの店舗名はMarugame Udon。「マルガメ」はイギリス人には発音しにくい言葉なのですが、逆にそれが日本らしく「耳に残る」店名になっています。

 

こちらは、丸亀製麺のオンライン広告です。

実は、店舗で使われている食器などのデザインはほとんど日本と同じままなのですが、ウェブサイトや広告などのマーケティングツールは現地向けに大幅に変更されています。

「うどん」というイギリスでの知名度が低い商品を分かりやすく魅力的に伝えるブランディングが受け入れられ、どの店舗にも連日現地客が行列を作っています。

 

 

 

健康志向ユーザーの多い欧州で受け入れられたヤクルト

 最後にもう一つ、Yakultの事例をご紹介します。

 

日本では80年の歴史があるヤクルト。現在は世界32か国で展開しており、イギリスの大手スーパーでも気軽に購入ができるようになりました。

こちらの動画CMでは、文字や長い説明を一切行わずにビジュアルイメージを上手く組み合わせることで、商品の成り立ち、健康効果を消費者に分かりやすくまとめています。

 

 

 

海外進出の際に求められるブランディングとは

今回はイギリス現地で日本食や日本にかかわる商品がどのようにブランディングされているかの現地最新情報をお届けしました。

ヨーロッパやイギリスは、規制や日本から距離が遠いことを理由に難しいとされる市場ですが、近年日本食や日本文化に対する理解がより深まっており、ブランディングの観点では日本製品には大きなビジネスチャンスがある市場といえるでしょう。

 

イギリスの消費者は日本商品に対しては、モダンでスタイリッシュなイメージを持っています。また企業ブランディングでは、日本のようにキャラクターやかわいらしいデザインを取り入れたり、情報をふんだんに盛り込んだ広告よりも、ビビッドな色合い、シンプルで短いキャッチコピー、ユーモアに富んだビジュアルコンテンツを好む傾向があります。

このような一定の傾向はありますが、具体的にどんな色合い、写真、キャッチコピーが効果的かは、業界によって異なり、海外進出には綿密な現地リサーチは必須となります。

 

イギリス、ヨーロッパへの進出をお考えの際には、ぜひウィル・フォースにご相談ください。

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