【海外マーケティング】旧正月にみられる台湾のマーケティングの特徴とは?
毎年日本の正月ムードが落ち着いた後に、台湾や中国などの旧正月に関するニュースを目にする方も多いかと思います。
台湾をはじめとする中華圏の人々にとって、この旧正月は一年の中でも特別な時期であり、多くの企業がプロモーションを強化する傾向があります。今回は台湾の旧正月における広告プロモーション事例をご紹介いたします。
台湾における旧正月の過ごし方
旧正月について
中華圏では、旧暦のお正月である日を新年として、お祝いをする習慣が残っており、それを日本語では「旧正月」と紹介されます。この旧正月ですが、台湾や中国の現地では一般的に「春節」という言葉で使われています。
台湾は、日本と同じ新暦を採用していますが、季節の行事などはいまだに旧暦で祝う習慣があり、カレンダーや手帳でも旧暦が併記されているものを多く目にします。
台湾では新暦の1月1日も祝日ではありますが、2日からは通常通りの生活が始まります。そのため、日本のようなお正月は、この旧正月の期間に過ごすのが一般的です。また、旧正月は毎年日付と長さが変わりますので、毎年いつから旧正月に入るのか確認が必要です。
旧正月は何をするのか
旧正月は日本と同様、家族で集まったり新年ならではの料理を食べたりして過ごします。そして旧正月の行事は縁起を重んじているものや、家族にまつわる行事がいくつかあるのが特徴です。
まず、新年の前日つまり日本の大みそかにあたる日を「除夕」といい、この日は家族と過ごすために故郷に帰る日とされています。
なかでも、除夕の晩はとても重要視され、家族みんなで集まって特別な食事である「年夜飯(もしくは年菜)」を食べます。
この除夕の夜は、台湾の個人商店はもちろんのこと、大手スーパーやデパートなども夕方で営業終了する所が多く、24時間空いているコンビニでさえも閉店する店もあります。それぐらい、この除夕は台湾の人々にとって大事な日といえます。
そして年が明けて、元旦にあたる「初一」を迎える前から、爆竹や花火が町中で上がりはじめます。近年台北などの都市部では、環境保護と迷惑防止の観点から、爆竹を禁止する通例を出しているものの、新年を迎える瞬間は爆発音のような爆竹が何度も鳴り響きます。
旧正月2日目である「初二」は、妻の実家に帰る習慣である「回家娘」の日として認識されています。このときから実家だけでなく、親戚や友人のところを訪ね歩いたり、旅行に出かけたりする方も増えます。
元旦から5日目の「初五」は、「開工」といわれる仕事始めの日となります。この日の午前中は、社員一同が会社の入り口などでお参り(拜拜)を行い、爆竹を鳴らしてから仕事を始める風景が街のあちらこちらで見られます。ただし、初五が週末に重なったときは、その日を仕事始めとせず、連休が明けてから仕事始めとする会社が多いのが現状です。
そして旧正月は、旧暦の1/15にあたる「元宵節」を迎えて、旧正月の一連の行事が終了します。「元宵節」は台湾では家族で元宵と呼ばれるお団子を食べるのが習慣となっています。そして幻想的なランタンフェスティバルが開催されるのも、この時期となります。
旧正月にどのような行動をするのか
身も家も整える準備をする
旧正月に入る前に「新しくする・綺麗にする」習慣があります。多くの人が除夕までに家の掃除をするので、この時期になるとハウスクリーニング業者の広告が増えたり、ヘアカットをする人が多くなるため、美容院の値段が通常より上がったり、予約が取りにくくなる傾向があります。
また「新しくする」という意味では、旧正月の前後は台湾社会において転職市場が最も動く時期もこの時期となります。
加えて、中華圏では赤=おめでたい色ということから、旧正月になると赤いものを身につける人が増えます。下着売り場で、真っ赤な下着が目立つ場所で売り出されるのも、この時期特有の光景といえます。
必要なものを買い出し
日本のお正月と同様、旧正月を迎えるにあたって必要なものの買い出しが行われます。台北の問屋街であり、台北の観光地としても有名な「迪化街」では、年に一度の大売り出し「年貨大街」が行われます。
そして多くの人が「春聯」と呼ばれる家の玄関などに貼るお祝いの言葉が書かれたものや、縁起物や花飾り、生花などを購入し、新年を迎える前に飾ります。
中国語でお祝いの言葉である「吉祥」と言葉に似ていることから、金柑の植木鉢やみかん、財運がくるという台湾語「旺來」に発音が似ているパイナップルもめでたいラッピングがされて販売されている風景をよく見ます。
その他、多くの人が家に集まるということもあり、チョコレートや飴、ナッツなどの人が集まって食べやすいお菓子や、特設のお菓子の詰め合わせコーナーが市場やスーパーで用意されるのも旧正月ならではの風景です。
旧正月に見られるプロモーションと売れ筋商品
プロモーションの傾向と新しい考え方
前述の通り、「旧正月=家族と集まる時期」という伝統的な価値観が強いこともあり、旧正月に向けて行われるプロモーションは家族を主体としたものが多く、感動的なもの、ハートフルなものが多い傾向にあります。
スナック菓子のCMでは、家族がリビングに集まって楽しそうにスナック菓子を食べる様子や、うさぎ年の限定パッケージの紹介。旧正月における王道のプロモーションといえます。
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台湾で大型家具や日常雑貨を販売している大手量販店のCMでは、いろんな立場の人たちのさまざまな旧正月の過ごし方をショートフィルム風のCMが、多くの人の共感を呼び、公開1ヶ月で90万回近く再生されています。
街が赤で染まるプロモーションと売れ筋商品
新しいものを身につける旧正月、そして中華圏では赤=おめでたい色ということから、街中が真っ赤に染まるのも旧正月の特徴です。それに合わせて広告も赤をベースに展開します。
それにあわせて、台湾もしくは中華圏でしか発売されない旧正月モチーフの限定商品を発売するブランドも多いのが特徴です。
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中でも、adidasやコンバースのスポーツ系ブランドが旧正月から限定のアイテムが複数発売され、若者に人気の芸能人が広告として起用されます。またGUCCIやジバンシィなどの高級ブランドでも旧正月に合わせて新作アイテムが販売されるため、ファッション誌でも旧正月限定アイテムの特集が行われます。
旧正月の売れ筋商品①「年菜・鍋」
台湾の人々にとって大みそかの夕飯は、一年で最も大事な食事と言っても過言ではありません。その行事を「圍爐」と言い、「圍爐」自体が家族みんなで食卓を囲み、仲睦まじく過ごす様子も表した言葉となります。その「圍爐」の時に食べる食事として代表的なものの一つが火鍋などの鍋類です。人気店の鍋が気軽に食べられるセットなどが多く販売されています。
また多くの人が集まる旧正月は、たくさんの料理(年菜)を用意しなければなりません。
たくさんの量の料理を準備するのは非常に大変であることから、旧正月前には飲食店やデパートなどで年菜の予約の受付を開始したり、簡単調理キットやお惣菜が販売されているのを目にします。
その中身は、高級ホテルや有名レストランから発売される豪華なものから、大手インターネットショッピングサイトが販売する有名店の商品を集めたもの、気軽に購入できるコンビニから発売される商品セット、そして一見台湾料理とは関係ないマクドナルドなどの外資系飲食店が展開する新年特別商品などもみられます。
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旧正月の売れ筋商品②贈答用セット
旧正月には実家や親戚の家、そして親しい友人の家を訪問したり、お世話になった方にプレゼントを贈る時期でもあります。そのためまちなかの売り場には、贈答用のフルーツやお酒、栄養ドリンクなど、旧正月限定商品を販売しており、日系企業も工夫を凝らした商品を多く展開しています。
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日本でも人気のお菓子「ステラおばさんのクッキー」を台湾で展開している「詩特莉食品 AUNT STELLA」は旧正月の限定セットとして、台湾限定のクッキー缶セットを販売。パッケージに旧正月らしいイラストが描かれた商品の中には、台湾産の食材を使った商品が入っており、可愛い手土産として多くのメディアに紹介されています。
番外編:各企業が「お年玉袋」で販促キャンペーンを実施
旧正月の習慣の一つとして、日本でいうお年玉をもらう習慣が台湾にもあります。
「紅包」と呼ばれる台湾のお年玉は、大人が子どもに渡すだけでなく、社会人になると孝行の意味も込めて、年長者に渡す習慣もあります。
お金を入れる袋自体も「紅包」と呼ばれ、旧正月が近づくと、小売店では紅包をプレゼントするキャンペーンを多くの企業が実施しています。
ミスタードーナツは、台湾でも大人気商品である「ポン・デ・リング」をキャラクターとなったポン・デ・ライオンをモチーフにした紅包を、既定の金額の購入者へプレゼントするキャンペーンを実施。あわせて、提示することで次回よりお得に購入できるカードも合わせて配布することで、再来店を促進するプロモーションを実施しています。
最後に
今回は、日本にはない旧正月に行われるプロモーションについて、紹介しました。
台湾の旧正月プロモーションは、12月のクリスマス後から1ヵ月以上に渡って行われます。また、多くの企業がこの旧正月前にボーナスを出すこともあり、1年で最も消費が活発になる外すことが出来ない商戦期です。
台湾の人々が旧正月をどのように過ごしているのかを正しく理解してコミュニケーション/プロモーションを行うことが、とても重要です。
弊社ではアジア、台湾向けのプロモーションを数多くお手伝いさせていただいております。
台湾向けのプロモーションをお考えの方はお気軽にご相談ください。