• 海外マーケティング

【第2回】なぜGoogleは自分を壊したのか──収益モデルの転換と、マーケターが今すべきこと

創業27年、Googleは「案内人」だった

前回の記事では、Google I/O 2026で発表された6つの機能を整理しました。今回はその「なぜ」に踏み込みます。

 

Googleは創業以来27年間、「他人のサイトに送客する会社」でした。「渋谷 おしゃれなカフェ」と検索すれば、食べログ・ブログ・Instagram・カフェ公式サイトへのリンクが並ぶ。

Googleは答えを持たず、ユーザーを正しい方向へ案内するだけでした。

広告もその仕組みに乗っており、リンクの上下に「スポンサー」枠を置き、クリックされるたびに課金する検索連動型広告がGoogleの収益の柱でした。

 

2026年、Googleは自らその立場を降りました。

 

「答える会社」になった理由

なぜGoogleは、うまく機能していたビジネスモデルを壊してまでAI化に踏み切ったのでしょうか。

答えは単純です。「やらない方が、もっと危なかった」から。

Googleが最も恐れていたのは、「わからないこと → 検索」という行動が「わからないこと → ChatGPT」に置き換わることでした。

 

ChatGPT・Claude・Perplexityなど、AIを使った情報収集ツールは急速に普及しています。「検索会社」のまま座していれば、ビジネスの根幹を競合に奪われる。

「自分で自分を壊してでも、AI化するしかない」──これがGoogleの判断でした。

 

検索とAI回答、広告との相性問題

ただしここに大きな矛盾があります。

従来の検索広告は「リンクの隣に広告枠を置く」仕組みです。

リンクが10本並べば、上下に広告を差し込む余地があり、クリック1回ごとに課金できます。

 

一方、AI回答は質問に直接答えます。

「渋谷でおしゃれなカフェなら、道玄坂ならA──隠れ家系、テラス席あり。代官山ならB──北欧インテリア、PC作業可。神泉ならC──自家焙煎、1人席が充実」

これだけ具体的な答えが返ってきたら、ユーザーはリンクをクリックしません。

会話の途中に「ところでスターバックスはいかがですか?」と広告を差し込んだら、体験が壊れます。

 

AI回答は、便利になればなるほど、従来型広告と相性が悪くなります。

 

「やらない=ChatGPTに検索を奪われる」「やる=自社の検索広告が痩せる」。どちらに転んでも痛い。Googleは「前者の方が致命的」と判断しました。

 

では、どこから稼ぐ? Googleが賭ける4つの収益源

① AI内広告:「推薦に紛れさせる」

AI回答の中に、スポンサー枠を自然な形で組み込みます。「ホテルはA・B・C──スポンサー推薦:D」という形です。

従来の「広告枠」から「推薦広告」への転換で、広告主にとっては「AIに推薦される側」に入れるかどうかが新たな競争軸になります。

② 成果報酬型:「予約・取引の手数料」

AIが飛行機・ホテル・レストランを代理予約する際、取引が成立した瞬間にGoogleへ手数料が入る仕組みです。AmazonやBooking.comが長年やってきたモデルへの移行です。

③ AIサブスク:「月額モデル」

Google AI ProおよびUltraという月額課金サービスへの移行です。2026年5月にAI Ultraの価格が月250ドルから月100ドルへ大幅値下げされました。

価格を下げてでも加入者数を増やし、エコシステムの中心に据えようとする戦略です。

④ エージェント経済:「本命はここ」

最も長期的に大きな収益源として、Googleが賭けているのがエージェント経済です。Universal Cart・Gemini Sparkの自動決済・Android XRの常時接続が揃えば、

予約・EC購入・契約更新のすべての入口をGoogleが握ることになります。「検索会社」から「Amazon型の取引プラットフォーム」への変身──これがGoogleの2026年以降の本丸です。

 

SEOの次:AEOという新しいゲーム

これはマーケター・制作担当にとって何を意味するでしょうか?

一言でまとめると、「クリックを前提としたビジネスモデルが、じわじわと侵食される」ということです。

 

削られていく側はSEOだけで集客していたサイト・比較メディア・アフィリエイトサイトなど。

生き残る・勝つ側は一次情報を持つ個人・企業、専門知識を持つ人・組織、ブランド指名を取れている事業者です。

 

ここで重要なのがAEO(Answer Engine Optimization)という概念。

SEOが「検索順位1位を取ること」を目的にしていたのに対し、AEOの目的は「AIの回答に引用されること」

AIが引用したくなる素材の条件は、個人の体験・現地取材・オリジナル写真・独自データなど、他社がコピーできない情報です。

KPIの読み替えも必要になります。「PV(何人来たか)」に加え、「AIへの露出シェア(どの質問の答えに、自社が引用されているか)」という視点が求められるのです。

 

「即買い」社会の光と影

Universal Cart・Gemini Spark・Android XRが揃うと、「考える→決める→買う」の3段階が1段階に圧縮される社会が現実になります。

便利さの反面、AIがあなたのIDでカードを切るセキュリティ上のリスク、迷う時間がゼロになることによる衝動消費、取引の入口をGoogleが独占することへの懸念など、問い直すべきことも少なくありません。

 

つまりは、テクノロジーの進化と同時に、顧客体験の設計者として考え続けることをより求められます。

 

私たちが今すべきこと:3つの問い直し

コンテンツ戦略:「検索順位を上げるコンテンツ」ではなく「AIに引用されるコンテンツ」に何が必要か。

自社が持つ一次情報・独自データ・現場の声を、発信できる形に整理できているか。

 

② KPI設計:PV・クリック数だけでなく、「AIに露出しているか」「ブランドが指名されているか」という指標を追加できるか。

グローバル展開においては、英語圏のAIに自社情報が正しく認識されているかの確認も重要になります。

 

ワークフロー:Gemini SparkのようなAIエージェントが日常に入ってきたとき、社内のどの業務から移行できるか。

「AIに任せる」判断ができる体制と、「人間が判断する」境界線の設計が求められます。

 

Googleが「案内人」をやめ「答える会社」になった2026年。テクノロジーの動向を追うと同時に、「私たちが大切にしたいことは何か」を言語化し続けることが、変化の時代のブランドには必要だと考えます。

 

<連載>Google I/O 2026 を制作現場の言葉で読む

  • 第1回:[Googleが、25年ぶりに検索を書き換えた──6つの発表を現場目線で整理する]
  • 第2回:なぜGoogleは自分を壊したのか──収益モデルの転換と、マーケターが今すべきこと(本記事)
  •  

出典:Google公式ブログ「Search in the agentic era」「Introducing the Universal Cart」「100 things we announced at I/O 2026」/RedShark News「Google I/O 2026: biggest announcements for creatives」ほか(2026年5月)